NICT Beyond5G研究開発推進ユニット

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要素技術

写真1

Beyond 5G/6Gの実現に必要と考えられる要素技術を以下の図にまとめました。これは、NICTが議論して描き上げた未来社会のシナリオに基づき、要素技術を抽出して整理したものです。
図をクリックまたはタップすると詳しい説明を見ることができます!

要素技術の全体図

要素技術の説明

超高速・大容量通信 アイコン

超高速・大容量通信

テラヘルツ通信

従来の技術では十分に利用することができなかった、電磁波の周波数帯であるテラヘルツ帯(電波と光の中間の周波数帯:およそ100GHz~10THz)を使いこなせるようにする技術である。超高速無線システムの候補として期待されている。

大容量光ファイバ通信

光ファイバ(細くて柔らかいガラスの繊維)を使って、従来の電気信号による通信よりも、大容量のデータを高速で長距離伝送できる技術である。例えば、海外と日本をつなぐインターネットの海底ケーブルや、家庭や企業のネットワーク、携帯電話網などで利用されており、数千kmもの遠距離通信が可能である。

光・電波融合

光ファイバネットワークと無線区間の相互接続技術であり、IoT機器やモバイル端末などの無線通信で発生するデータを光ファイバネットワークに流し、データセンターやエッジサーバなどで処理された大容量データを光ファイバネットワーク経由で無線区間に送信する技術である。

超低遅延・超多数接続 アイコン

超低遅延・超多数接続

エッジコンピューティング

ネットワークを介した遠くのクラウド上ではなく、街中に埋め込まれたデバイスやネットワーク内のコンピュータを活用することで、超低遅延かつ信頼性の高いICTサービスを実行する技術である。

適応型無線アクセス

無線機同士が連携して高度な通信を実現するために、通信環境や様々な要件に応じて、電波型式(変調方式や占有帯域幅)や通信タイミング、中継経路等を制御する技術である。

適応型無線アプリケーション

複数の無線機が連携して高度な通信を実現するために、通信環境や様々な要件に応じて、セッション管理や時刻同期、アプリインタフェース(アプリケーションが他のアプリケーションやシステムと通信するためのインタフェース)を実現するための技術である。

電波放射空間の自律的な局所化・追尾・予約

電波を使って情報を伝送しようとする移動デバイスが、自律的もしくは他デバイスとの協調的な手法で電波放射空間の算出を必要最小限行い、電波放射空間を限定し(局所化)、デバイスの移動に伴う電波放射空間の追尾を行う。さらに、移動デバイスがこれからどう移動するか予測した上で、電波資源の利用を必要とする空間と時間をあらかじめ高精度に予約して用いる周波数資源共用技術である。

超多段接続自律M2Mネットワーク

デバイス同士がすれ違う際に自動的に情報を共有する「すれ違い通信方式」を用いて、屋内外に遍在する多様な社会インフラやそれらが備える多数のデバイスが自律的に(もしくは要求を受けて)つながり、超多段中継型のM2M(Machine to Machine)ネットワークが自律的に構築される技術である。

高度電波エミュレーション アイコン

有無線通信・
ネットワーク制御技術

ネットワーク制御

ネットワークにおける各種サービスの要求に応じて、ネットワーク内の機器やリソースを制御する技術である。新しいサービスの提供や新しい通信規格の登場といった環境変化に対応し、持続的に発展するネットワーク技術である。具体的には、次の2つのような技術がある。

1. ゼロタッチ自動化

コアネットワーク、無線アクセス網や非地上系ネットワーク(NTN)など、異なる種類の複数のネットワークのドメインに跨って、E2E (End-to-End)のサービスのプロビジョニングを、人の介入を最小限に抑え、自動化によってネットワークの管理・運用を行う技術である。

2. ネットワーク運用完全自動化技術

人工知能(AI)や機械学習などをベースとした高度データ分析機構を用いて、ネットワークの監視、管理、設定、障害復旧などを完全自動化する技術である。

周波数の割当・共用管理

行政(総務省)が、他の電波で通信が阻害されないようにするために通信事業者に対して割り当てている特定の周波数について、高周波数帯利用に合わせた再割り当てや、通信用途多様化に合わせて通信事業者に割り当てた周波数の複数者での共用・動的な割り当てができるようにするための技術である。

自営無線システム管理(ローカルBeyond 5G)

ローカル5Gは、5Gの高度な技術を自営無線システムで用いるための日本独自の制度で、携帯電話事業者による全国向け5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体等は自らの建物や敷地内でスポット的に独自のネットワークを構築できる技術である。

高度電波エミュレーション

仮想空間上で、利用者の想定シナリオに基づいた実際の電波伝搬環境を高精度に模擬することによって、無線通信や電波利用技術の開発・評価や大規模システム検証を短時間かつ低コストで実現する技術である。実現に必要な要素技術は大きく3つある。

1. 電波伝搬や実環境のモデル化技術

電波伝搬や実世界の環境を仮想的に再現するために、仮想空間上に細かくモデル化された3D環境を構築し、その環境での電波伝搬を高精度で再現するための電波伝搬モデルを開発する技術である。

2. 模擬無線システム

実際の無線通信システムに近い環境を仮想空間上に構築することで、無線通信の開発・評価や性能検証を行うシステムである。具体的には、無線通信のアナログ信号をデジタル信号に変換することで、仮想環境上で無線通信のシミュレーションを行える。また、6G の高度な無線通信システムの検証を実施するためにも、5G や IEEE 802.11ax などの最先端システムの運用を可能とする実装技術が必要となる。

3. 仮想環境検証基盤

電波エミュレーションを行う上で欠かせない大規模計算機環境であり、外部接続された無線機と、当該基盤上で仮想的に実装された無線機が、現実の電波伝搬モデルを参照しながら相互作用した結果がリアルタイムに出力される。

無線システムの多層化-NTN アイコン

無線システムの多層化-NTN

衛星・非地上系通信プラットフォーム

地上から宇宙空間にある人工衛星や高高度プラットフォーム(HAPS)、航空機、ドローン、船舶など、様々な非地上系の通信機器がシームレスに繋がる通信環境を実現するための無線通信機器の技術である。

高高度プラットフォーム(HAPS)

高度20kmから30km程度の成層圏に浮遊するグライダー型の中継基地局のことである。太陽光発電によって電力を供給し、高度によって地上局に比べ広い範囲をカバーすることができる。地上と宇宙の中間の高度に位置し、航空機やドローンなどの低空飛行機や、人工衛星などの高空飛行機と地上の通信を中継することができる。

光衛星通信

従来の衛星通信で主に用いられてきた電波に代わり、より周波数の高い光の領域の電磁波(レーザ)を利用する無線技術である。電波よりも指向性が高いため、高精度な制御が衛星に要求されるが、消費電力が小さく、大容量通信が可能といった特徴を持つ。

海上通信

海洋上において船舶に対してM2M(Machine to Machine)データの伝送や高速・大容量な通信回線を提供する技術である。

海中・水中通信

従来、電波の利用が困難とされていた海中・水中での通信技術である。従来の音波による通信では通信速度が遅く、伝搬遅延も大きいという課題があったが、電波を用いることで、高速かつ低遅延の通信が可能となる。

多層ネットワーク連携制御

深宇宙探査機、静止衛星、低軌道衛星、HAPS、航空機、ドローン、船舶、地上局、Beyond 5G/6G などを多層的・有機的につなぎ、使用するプラットフォームやネットワーク接続をサービスに応じて柔軟に制御する技術である。

時空間同期 アイコン

時空間同期

無線時空間同期

離れたデバイス同士の協調作業にはそれぞれのデバイスが持っている時刻と位置の情報を正確に共有する必要があり、皆が持つ時間と空間の基準を安価かつ簡便に一致させる技術である。

原子時計チップ

周波数のずれない非常に安定したクロック信号を提供する技術である。機械の中にあるクロックは振り子(=発振子)で動く。一般的な発振子は温度や加速度、経年劣化でずれてしまうため、標準時生成に使う原子時計の大きさを MEMS技術や光学技術によって劇的に小さくし、自動車や携帯端末に搭載することでいつでも安定したクロックを持つことができる。

MEMS技術

センサーやスイッチなどの電子部品をシリコンやガラス、有機素材の基盤に微細加工技術を利用して集積させる微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems)である。非常に小さい機械の中に様々な機能を備えることができ、低電力で機能するという特徴を持つ。

基準時刻の生成共有

ローカルなネットワーク上にある多数の時計を利用して耐災害性の高い仮想的な基準時刻を生成・共有し、効率的な域内通信を実現するための技術である。この共有時刻を頼りに標準時や協定世界時等の絶対時刻との同期をネットワーク参加者が容易に行うことができる。

超安全・信頼性 アイコン

超安全・信頼性

エマージング・セキュリティ

常に進化するセキュリティの分野で、新しい脅威に対応するために開発された新しいセキュリティ技術やアプローチのことである。従来のセキュリティ対策には限界があるため、新しい脅威に対応するために常に新しいアプローチが求められている。

実攻撃データに基づくサイバーセキュリティ

多様化・高度化するサイバー攻撃に対して、攻撃者の手口や攻撃経路を特定し、対策を導出する技術である。次の2つの技術がある。

攻撃観測・可視化技術

攻撃が行われた経路や攻撃されたネットワークの状況をリアルタイムで把握することができるため、攻撃に対する早期の対応が可能になる。

大規模集約された情報を横断分析する技術

大規模集約された情報を横断分析する技術は、膨大な情報を扱うことができるため、攻撃の傾向やパターンを把握することができ、未然に対策を講じることができる。

量子暗号

共有した秘密鍵を使ってデータを暗号化・伝送する暗号方式であり、量子力学の性質を利用しているため、現在知られている暗号のなかで最も強力な秘匿性を持っている。量子コンピュータを含むいかなる計算機でも原理的に解読不可能な「情報理論的安全性」を実現することができる。

電磁両立性

電磁波が周囲の無線機器や電気電子機器に妨害を与えず、共存できる電磁環境を維持することである。また、身の回りの無線機器や電気電子機器から発する電磁波が、人体に吸収される量(ばく露量)を評価し、健康に影響することなく電波を最大限に活用できる環境の構築が求められる。これらを実現するためには、測定器の開発や高精度・高信頼な電波計測技術が必要となる。

レジリエントICT

様々な障害や災害等の発生などによって、環境が急激に変化・変動する場合であっても、情報通信基盤(通信ネットワーク、データ観測・解析等)の応急的・継続的な利活用を実現するための技術である。

センシング

フィジカル空間に存在する物理量や情報を計測する技術であり、人・モノ・環境やそれらの状態などが含まれる。センサーを用いて、光や音、温度、湿度、振動、位置情報、生体情報など様々な情報を計測することができる。

超臨場感・革新的アプリケーション アイコン

超臨場感・
革新的アプリケーション

脳情報の読み取り・可視化・BMI

脳情報を非侵襲的あるいは低侵襲的手法により読み取り、解析することにより、各種の機器を制御したり、非言語的情報(感情、理解度、スキル)コミュニケーションを行ったりできる技術である。

直感性の計測・伝達・保証

遠隔会議や遠隔操作などサイバー空間における作業を、脳波を含む生体信号を計測することでユーザが直感的に行えるようにするブレインセントリック(脳中心的)なネットワーク制御技術である。

リアル3Dアバター・五感伝達・XR

自分の身体や環境を瞬時に3Dモデル化し五感情報(視覚/聴覚/触覚/嗅覚など)とともに遠隔地に伝達し、再現することで、リアルで自然な遠隔へのXRインタラクションを可能にする臨場感の高いコミュニケーション技術である。

言語・非言語情報に基づくAI分析・対話

ネット等に存在する膨大な情報や知識を分析・整理し、言語・非言語情報を用いた多様な対話を介してユーザを支援し、ユーザの世界に対する認識を拡大、精緻化する技術である。

エッジAI行動支援

エッジコンピューティングとAIを融合させ、エッジ(末端)環境のIoT機器で大容量・低遅延・超多様なデータに基づく機械学習や推論を行うための技術である。エッジ AI には、クラウドとエッジが連携して学習や推論を行うものから、エッジ環境の中だけで行うものまで、様々なバリエーションがある。

多言語の同時通訳・言い換え・要約

日本人と外国人のコミュニケーションをリアルタイムで成立させる異言語間変換技術である。翻訳をしやすくするために同一言語内で最小限の言い換えを行ったり、文脈・非言語情報から情報を参照したりすることも含んでいる。

自動運転

人やモノの運送に使われる車やトラック、産業や農業、医療現場の労働力不足を補うロボット、障害者や高齢者の移動を助ける車いすなど、あらゆる分野においてモビリティ(車両)の移動を自動化した技術である。

ドローン・空飛ぶクルマ

自動制御プログラムによって目視内から目視外まで、自由に上空を飛行させることができる無人航空機技術である。空飛ぶスマホ、空飛ぶIoTとも言われ、これまで利用されていなかった3次元空間をネットワーク化することを可能とし、今後は空飛ぶクルマにも発展する。