開催日 : 第1回 2025年2月3日(月)
第2回 2025年3月11日(火) 〜 12日(水)
第3回 2025年3月19日(水)
場所 : NICT日本橋イノベーションセンター、 静岡県三島市
Beyond5G研究開発推進ユニット主催の2024年度のゼログラビティイベントを開催しました。今年度は「Beyond 5Gの社会実装に向けた課題・アイデア・活用シーンを議論する」ことをテーマに開催しました。
全3回を一連とした開催で、第1回目に開催趣旨やNICTの研究内容をインプットして、第2回目にスマートシティに取り組んでいる静岡県三島市を視察訪問し、第3回目に仕上げるような流れで進めました。
合計35名(うちNICT以外の参加者は19名)に参加頂き、多様なバックグラウンドを持つ有識者や事業者に議論頂きました。
ゼログラビティとは、「誰が上で誰が下とか、マジョリティとかマイナーとか、そういうものは全部無くして、誰もが異なるバックグラウンドや価値観を持っているということをお互いが尊重し、フラットでオープンなディスカッションを行う」という意味です。
第1回目は、まずNICT Beyond5Gデザインイニシアティブ長の石津から、「Beyond 5Gを実現するためにアイデアだけでなく、実装課題を出していこうとしている。今年度は、実際の社会で使ってもらうため、これまでのアイデア創出から一歩先を意識した議論を行いたい。」と開催趣旨が説明されました。その後、NICT研究者5人から研究状況の講演を行いました。
また、レフィクシア株式会社の高安氏からは「GPS衛星とL6信号を使うことによって緯度経度標高をセンチメートル精度で測位ができる技術」、Gems株式会社の熊谷氏からは「コンビニ業界等のサプライチェーン」について講演頂き、新しい着想を経てディスカッションに入ることができました。
グループに分かれて、実装課題についてのディスカッションを行いました。
「協働・共創を促進するためのインセンティブやメリットが明確化されることが必要で、共通化するところなどの整理が必要ではないか」
「全てをシステムでやるのではなく、人手を使った方がよいアナログな面と、AIなどのデジタルとの役割分担が重要ではないか」
といった意見のほかにも、参加している通信、メーカー、交通、電力などの新規事業に携わる事業者の目線からの意見なども多く出ていました。
スマートシティを推進している静岡県三島市を視察しました。三島市の特徴である「水の都」を散策で体感したり、三島市役所に訪問して取り組みなどのご説明を頂いたりしました。また、三島みらい研究所に移動し、改めて三島市のスマートシティアドバイザーをされている株式会社T2Nの梅山氏、櫛谷氏から「三島市スマートシティの取組紹介」、「デジタル田園都市国家構想提案」について講演頂きました。
参加者のバックグラウンドに応じて、防災、通信、まちづくりのグループに分かれ、実際のフィールドやこれまでのインプットを受けて気づいた点や課題の共有、キーワードの抽出などを行いながら、「三島市×NICT構想・研究の活用シーン」について検討を行いました。ディスカッションでは、
「1つの自治体だけではなく、全国の他自治体でも活用できるプラットフォームをつくる。」
「地元や観光客の皆が利益を受けられるシステムが良い。」
「データ収集の抵抗感をなくしたアプリケーションの構築」
「ウェアラブルセンサーを付ける動機付け『監視されない感覚で監視したい』」
「防災関係では、平時と有事どちらも使えるシステムづくり」
など、たくさんの意見が出ました。
第3回目は、新たに有識者2名に講演をいただいた上で、1回目、2回目の議論を、深堀する流れで行いました。有識者からの講演では、国際大学の砂田氏から「技術の中には長期にわたり経済社会を大きく変える汎用技術があり、多くはテクノロジーラディカル(技術主体)ではなく、ユースラディカル(利用面の革新)である。人々が抱える要求や課題からバックキャストしての検討が重要」といった話や、東京電力HDの熊野氏からは「電気事業も変革の時代を迎え、他自動車産業との融合も進み、電力系統の運用の広域化まで広がっている。電気事業における通信を切り取っても時代とともに変化している。」といった貴重なお話を頂きました。
講演の内容を聞いた上でで、第2回目までの内容をブラッシュアップする形で、Beyond 5Gの実装課題や必要なアクションの検討を行いました。ディスカッションでは、
「資金の獲得方法、アプリに入れるための正確なデータを集める方法が重要」
「超高速スポット通信を活用するための設備を多数準備する必要がある」
「推し活の概念を組み合わせる。例えば旅に行くときに、動物に餌をあげるのが好きな人には、マイ動物を選定するとどこで何をしているかがタイムリーに分かる」
といった実装のための具体的な意見が出ました。
全3回を同じメンバーかつ短期間で実施することで、昨年よりも深い議論をすることができました。そして今回は、「実装課題」をテーマとして行ったことで、Beyond 5Gの社会実装には技術的課題に加え、「データをどうすれば収集・共有してもらえるのか」、「金銭的なメリットをどう示していくか」のような社会的課題が、実装に向けた大きなハードルとなっていることが分わかりました。今後、研究や実証の展開に向けて、今回得られた知見を活かし、より多くの方々と連携・推進していきたいと考えます。
今後もNICTの取組にご注目・ご協力の程よろしくお願いします。
講演頂いた方々を紹介いたします。貴重なお話をご紹介頂きありがとうございました。
第1回
高安 基大 (レフィクシア株式会社 代表取締役社長/東京工業大学 特任助教)
熊谷 将一郎 (Gems株式会社 代表取締役)
第2回
梅山 直希 (株式会社T2N 代表取締役社長)
櫛谷 智史 (株式会社T2N シニアコンサルタント)
第3回
砂田 薫 (国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員・情報システム学会 会長)
熊野 広之 (東京電力ホールディングス株式会社 技術戦略ユニット技術統括室プロデューサー )
永野 秀尚 (総合テストベッド研究開発推進センター 研究開発推進センター長)
児島 史秀 (ソーシャルイノベーションユニット 主管研究員)
是津 耕司 (統合ビッグデータ研究センター 研究センター長)
荘司 洋三 (ソーシャルICTシステム研究室 室長)
宮澤 高也 (ネットワークアーキテクチャ研究室 研究マネージャー)